カトリック神戸中央教会

Kobe Central

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赤波江 豊神父
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黙想のヒント 年間第29主日

(「ゼベダイの子ヤコブとヨハネ」(マルコ10:35)

ゼベダイの子ヤコブとヨハネは漁をしていたとき、イエスから弟子として呼ばれました。
ヤコブが兄でヨハネが弟であったと思われます。
最初この二人はイエスの弟子として従っていく意味が分かっていなかったのでしょう。
そのため二人は進み出てイエスに願います。

「栄光をお受けになるとき、わたしどもの一人をあなたの右に、もう一人を左に座らせてください。」イエスは言われた。
あなた方は自分が何を願っているか、分かっていない。
このわたしが飲む杯を飲み、このわたしが受ける洗礼を受けることができるか。」
彼らが、「できます」というと、イエスは言われた。「確かに、あなたがたはわたしが飲む杯を飲み、わたしが受ける洗礼を受けることになる。」(マルコ:37-39)

その当時ぶどう酒を作るときには、まずぶどうの実は足で踏みつぶされて発酵しぶどう酒となりました。
「わたしが飲む杯」とはイエスが人々から踏みつぶされること、即ち受難を意味し、「わたしが受ける洗礼」とは血の洗礼、即ち死を意味します。
ヤコブとヨハネはまだ意味が分からず、「できます」と答えました。

この兄弟ヤコブとヨハネは非常に対照的です。
イエスが、「確かにあなたがたはわたしが飲む杯を飲み、わたしが受ける洗礼をうけることになる。」と予告したとおり、西暦44年の春ヤコブは使徒たちの中で最初にイエスの杯を飲み、イエスの洗礼を受けて殉教しました。
このことが使徒言行録12章2節に記されています。
ちなみに、聖書の中で使徒の殉教が記されているのはヤコブだけです。
その後ヤコブの遺体はスペインに運ばれて埋葬され、現在サンチアゴ・デ・コンポステラという世界的な巡礼地になっています。

一方ヨハネは12使徒のなかで唯一殉教せず、ギリシャのパトモス島で90歳近くまで生きたと伝えられています。
ですからヨハネは殉教者ではなく「証聖者」として祝われています。
このヨハネは晩年近く自分の足で歩くことが困難になったので、信者たちは主日のミサのためにヨハネを車に乗せて各教会へ運び、ヨハネはそこでミサをささげていましたが、説教はいつも同じで、「子たちよ、神はあなた方を愛しておられる。あなたがたも互いに愛し合いなさい。」この一言だけでした。
それでもいつも多くの信者が集まってきました。

ある日一人の信者が、どうしていつも同じことを話すのかと尋ねると、ヨハネは「わたしの先生がいつもそう言っていたから」と答えたそうです。
実際ヨハネの福音書や手紙の中ではこの言葉が何度も繰り返されています。
「子たちよ、神はあなた方を愛しておられる。あなたがたも互いに愛し合いなさい。」この単純な言葉は弟子として一番若かったヨハネの心にしたたり続け、ちょうど一滴一滴のしずくが長い年月を経て固い岩を割るように、ヨハネの固い人間の殻を破って福音書や手紙の中でイエスの神性をにじみ出しているのです。

ヤコブとヨハネ、この二人はあまり意味も分からずイエスに従いましたが、二人ともそれぞれの仕方で生涯を全うしました。
わたしたちも今、あまり意味が分からないままイエスに従っているかもしれません。
でも大事なことは挫折したとしても諦めずに従い続けることです。
最後にはイエスがわたしたちを行くべきところに連れて行ってくれるはずですから。

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